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ピアニストの手は魔法の手-3

こんにちは。今日もこのブログへお越しくださり、ありがとうございます。このところピアノを弾くテクニックについての話題が2回続きましたが、今日の3回目で締めくくる内容にいたします。ここまで読んでくださり本当にありがとうございます。

 

本題のテクニックの話の前に、少し寄り道をします。

 

一般的な話として、ピアノを習う効果として、「右脳を鍛える」とか、「学力も上がる」などと言われることがあります。

私個人の気持ちとしては、能力的な効果をピアノを習う理由にくっつけると、本来の音楽の目的から逸れてしまうと感じています。

個人的な能力の差は歴然としてあって、どんなに進歩が速かろうと遅かろうと、何も問題ないのです。

大切なのは、音楽の力で今この瞬間を幸せにできるのかどうか、だけです。

レッスンは言わば実験の連続です。先生も生徒も、呑気に、明るく、楽しく、何度もやってみて、出来たことをただ喜ぶ。

これくらい単純な気持ちになって臨みたいと思っています。

 

実は先日、娘が言ったのです。

娘は人の気持ちに敏感な子ということもあるのですが、塾の先生がイラッとすると、何も言わなくても、顔が見えなくても、隣にいるだけでわかると言うのです。おそらく娘の理解力が予想以上に低い時に、先生は自分の無力感にイラッとするのだと思います。

私もピアノのレッスンで、手を尽くしてもうまく行かないときにイラッとするので、よくわかります。

自分の無力さを感じて、焦ってしまうのです。

そういう時でも私はニコニコしているのですが、もしかしたら生徒には先生のイラッが伝わってしまったのかもしれません。

そこで自分の気持ちをもっと掘り下げようと思いました。

たくさんの方法を考えて試してがんばって教えて、それでも出来るようにならない時の覚悟をしよう、と。

それを怖れているのは、生徒より先生の方です。

先生は何を怖れているのでしょうね。

敵は自分自身の恐怖心です。

敵の正体を暴いてみようと思います(笑)。

 

さて、本題に入ります!

この連載のタイトルは「ピアニストの手は魔法の手」ですが、今日は「手」というよりも「念力」みたいなテクニックの話です。

よくピアノの先生はこう言います。「もっと歌ってごらん!」と。

ピアノを弾く指に「歌って」という言葉。

確かに、ピアノで「歌う」ことが出来るのです。

メロディを弾く。

歌って弾く。歌わないで弾く。

「歌っている感じ」がするときと「歌っていない感じがする」ときがあるのです。

何が違うのでしょう?

その答えは、

ピアノの音は物理的には調律された音程しか出ないはずですが、物理を超えた力により、音程を変えることができるのです。

音程を自由に変えられる楽器の代表格は、人体(声楽)とヴァイオリンなどの弦楽器です。

ピアノは平均律という調整法であらかじめ音を作ってある楽器なので、物理的には調整された音しか出ません。

ところが、ピアノは平均律を超えた表現を聴かせてくれます。

やっているのは、弾き手の念力です。

コンサートなどでは、聴衆が音楽を愛する念力も作用していると思います。

 

ハンマーが弦を打つという物理現象は単純なのですが、なぜか、音程を微妙に高くしたり低くすることができます。

暗い表情の音が欲しいときは、低く。

明るい表情の音が欲しいときは、高く。

本能的にやってしまうのです。

思いを込めると音程が変わるのです。

これが、今日の「魔法」の話です!!

 

当たりまえな話なのかもしれません。

花でも、木でも、愛された方が美しく大きく成長するのと同じかもしれません。

 

私が大学生くらいの頃の話を最近思い出しました。

我が家に遊びにきた友人で、音楽専門の人ではないのですが歌がものすごく上手な人でした。

その彼が私の弾くピアノを聴いてこう言いました。

「ドとレとか、隣の音同士の中間の音が出るんだね」

私はその時何のことを言っているのかよくわからなかったのですが、つい最近その話を急に思い出したのです。

彼が指摘したのは「音程が自由自在になることが不思議だ」ということだったのです。

 

それと似たような話がもう一つあります。

こちらは私の恩師が教えてくれた話です。

恩師が、ボレットという有名なピアニストのリサイタルを聴きにいったときの話です。

ボレットは見事な演奏を聴かせたのですが、アンコール曲の最後の音で、指を滑らせてしまって、半音ズレた音が出てしまったのです。ところが、間違えたはずの音が、余韻の中で正しい音にまで上がっていき、完全な正しい和音に変化したと言うのです。

彼は指を触れずに、音を変えたということになりますね!

 

私はレッスンで、「歌ってごらん」と言うと、メロディが感情的にネバネバしてしまう気がするので、

その代わりに、「念力入れてみて」と言っています。

 

「ピアニストの手は魔法の手」

シリーズの締めくくりは、

「ピアニストの手から念力出ます」

と言い換えても良いかな!と思います。

 

ピアノは気持ちがよいです。

ピアノで自分を幸せモードに調整すること。

これがゴールです。

結果を出すのは一年後とか将来ではなく、今も出せますね。

ピアノは私を幸せ気分にしてくれる強い味方。

こんなふうにピアノを育てたいと思います。

 

またこのブログへ遊びにいらしてくださいね。

 

立川市 ピアノ教室ソラージュ